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整体学校の選び方②民間資格は不利か

民間資格の二つのデメリットとは

一般的な整体学校で取得できる資格は民間資格であり、鍼灸師やあん摩マッサージ師のような医療系国家資格ではありません。その学校が独自に認定したいわば個人的な資格、それが民間資格です。(詳しくはこちらを参考ください)

 

鍼灸師などの医療系国家資格と比較すれば、民間整体資格のメリットはほとんどありません。しかしデメリットは大きく二つあります。

 

<民間整体資格のデメリット①保険治療を行えない>

例えば柔道整復師(整骨院を開業できる資格)を持っていれば、法律で定められた範囲内の保険治療を行うことができます。保険治療を行えば、患者さんの自己負担が大幅に減額しますから、集客面で大きなメリットになります。

例えば整骨院と整体院が隣り合わせで並んでいて、(厳密には治療/施術内容と目的は全く別種であるものですが)急性の腰の痛みを抱えた患者さんやってきたならば、保険を使えないで何千円もする整体院より、保険を使えて数百円で済む整骨院の方が選ぶ可能性が高いでしょう。そういうメリットはあります。

 

<民間整体資格のデメリット②社会的信用が低い>

整体院の前に「当院のスタッフは全て国家資格保持者です」という看板を見かけることがあります。日本人は権威に弱いと言われることもありますが、「国家資格」という信用は無視できないものがあります。また実際に鍼灸師や柔道整復師の資格を得るためには3年以上の通学が必要ですから、「しっかりと教育を受けている」という点において一定の信用が置けます。

一方の民間の整体学校は教育期間もまちまちです。中には1か月とか2週間というものもあります。さらに言えば別に整体学校に行かなくとも整体師になって開業することさえできるのです。そういうことを考えると、民間整体師の方が相対的に社会的信用が低いのも妥当だと言えるでしょう。

 

これら二つのデメリットがあると理解したうえで、民間整体師として活動していくことが「実際的に」どの程度マイナスになるのか考えてみましょう。

 

民間資格の実際的なデメリットについての考察

実は民間資格だけを所持して整体師として活動する実際的なマイナスはほとんどない、と聞けば驚くでしょうか。しかし現実には「今のところ」マイナスはほとんどないのです。これについて解説しましょう。

 

まず一つ目の「保険治療を行えない」ことについて。

一昔前(10年くらい前まで)であれば保険治療を行えることは大きなメリットでした。当時「水増し請求」「空請求」(実際の治療以上に保険点数を国に請求すること)のニュースが世間を騒がせませしたが、整骨院を中心に潤沢に保険を使えた時代がありました。しかし今は国の医療費も足りず、さらに整骨院などが爆発的に数を増やしたので保険請求の審査も厳しくなっています。つまり思うほど以前ほど保険治療を行えなくなり、最近の整骨院でも保険を使わない「自費治療」への移行が進んでいます。こうなると整体院と何も変わらないのです。

 

2つ目の「社会的信用」ですが、保険が使いにくくなり、さらに競争過多で経営に陰りが出てきた整骨院や鍼灸院から整体院への鞍替えが増えています。その影響でしょうか、昔の整骨院や鍼灸院ではあまり手を出さなかった「骨盤矯正」や「美容メニュー」などを積極的に扱うようになってきました。また「回数券」などを使った顧客の囲い込みなども増え、やっていることが整体院と変わらなくなってきたのです。

こうなるといくら口で「国家資格者」を謳っても、世間からみれば整体師との区別がつきにくくなります。こうして民間整体師と国家資格者の距離が近づき、「社会的信用」についても差が無くなりつつあります。

 

国家資格者のデメリットもある

冒頭で国家資格者に対して民間資格者のメリットはほとんどない、と書きましたが、実は表に表れないメリットがあります。それは資金計画に関してです。

 

鍼灸師や柔整師の資格を取るためには3年以上の通学が必要になります。そのトータルの学費は数百万円にもなります。しかし整体学校でしたら数十万円程度がほとんどです。整体学校の方が桁が1つ少ない学費です。また学習期間も多くの場合、数か月程度で卒業できます。

 

仮に25歳でこの世界に入るとして、国家資格を取って働き始めるのは28歳になります。そこから収入を得はじめます。しかし民間整体師でしたら1年後の26歳には働き始めますから、国家資格者より2年早く収入が発生します(つまり生涯賃金が2年分多くなるということです)。さらに国家資格に比べて学費が何百万円も浮いていますから、その分を開業資金や追加の技術習得費、あるいは万が一の赤字の時に備えての貯蓄などに回すこともできます。数百万円の資金を有効活用できる、このメリットは決して無視できないものではないでしょうか。

 

一昔前でしたら、国家資格を取るためにデビューが2年遅れても、その後の収入で充分に挽回できました。しかし民間整体師も、国家資格者も収入の差はほとんどありません。こうなると初期投資(学費)の負担が重くのしかかってくるのです。

 

お金と時間はいくらでも投資できるという人ならば、「国家資格」へのこだわりも良いですが、そうでない人はこの点についてよく考えるべきだと思います。

 

と言われても、「国家資格と民間資格では卒業後の差がつくんじゃないの?」という心配が湧くかもしれませんね。その点について次の「整体学校の選び方③卒業後の働き方」で解説します。